『A書店物語』<前史:02> 本屋はココロゆるむ場所

『A書店物語』<前史:02> 本屋はココロゆるむ場所

 とりあえずもぐりこんだその本屋は、はっきり言ってクォリティは高くなかった。平台には売れ筋の本を積むものであるが、夏になると本はすべて撤去される。

 ジャア~ン、花火のセットをいっぱい置くのである。経営者、曰く「花火は利(益)がええけんな」。本屋の日常である返品抜き取りも、「ほこらへんにあるやつを箱いっぱいに詰めといて」というアバウトな指示だった。

 力を入れていたのは、「セット本」である。返品期限切れとかのエロ雑誌を何冊かビニール袋に詰めるのである。一番上には通常の書店ルートじゃない、セクシーな写真誌を用意する。なかなかのボリューム感が出て、欲情をそそられるらしく、よく売れた。エロはやっぱり男のロマンだな。

 ちっちゃい店だけど、固定客がちゃんといた。いつもマスクして小声で喋るので、何を言っているのかわからないような人だけど、コミックに詳しかった。これは売れるというという感想は役に立った。

 小学校低学年の少年もよく来ていた。この子はおとなしくて、自己表現がにがてらしく、学校でもいじめられているという噂だった。本が好き、本屋が好きという感じがよくわかった。少年にとってそのちいさな本屋がやすらぎの場所だったのだろう。いつも長く居たけれど、邪魔扱いはしなかった。と言って話しかけることもしない。その方が少年にとって気楽におれるだろう思った。いつも来る時間に来ないと心配になった。小さくても本屋さんっていい場所だなと思った。(って、椎名誠が編集長をしていた『月刊・本の雑誌』みたいな雰囲気だな)

画像


 自分の家の四軒隣が本屋だった。学校の帰り、自宅の前を通り過ぎてその本屋へ行って立ち読みしていた。夕方になると、母親がやって来て、「晩ごはんができとうけん、はようもんてきい」と連れ戻された。

 高校2年生の終わりにクラスで文集をだした。そこに自分宛ての文が載っていた。「いつも立ち読みばかりで、たまには本を買いなさい」とあった。同級生の女子がその本屋でバイトしていたのだ。知らんかった! まったく気づかなかった。ずっと見られてたんだと思うと、ひそかに赤面した。

(次回、未定)
にほんブログ村 本ブログ 出版社・書店へ
にほんブログ村


社会・政治問題ランキング

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック