『A書店物語』 <前史:03> グロリアとシャリイ

『A書店物語』
<前史:03> グロリアとシャリイ

 この書店の勤務はきつかった。午前中は雑誌の配達。店屋さんにある雑誌スタンドや地元のスーパーに納品して並べるのである。美容院や個人宅もあった。コンビニがあまりない時代だった。

 昼から店舗に戻り本を出したり、抜き取って返品作業、レジも。手伝いのパートさんが来る日は楽だった。夕方、学生アルバイトさんが来て、店を出る。家に帰り、ごはんを食べる。おフロに入ったりする。そしてまた家を出る。昼とは違う大きい店舗のレジをするのである。夜11時まで。

 休みは週1回。当時の会社はどこもこれが普通だった。この勤め先が普通じゃないのは、病気や用事で休むと、その分残りの休みが削られるのである。風邪をこじらせて2,3日休んでしまうと、月の休みは1日になってしまうという、恐怖のシステムだった。こんなん労働条件違反だと思うが。

 しかもだ、お給料にびっくりした。毎日残業しているのに、10万円前後だった。これが試用期間だからなのかわからんけど、ありえへんな。ひと月たって、社員の手続きを勧められたけど、自分の方からいやまだいいですと断っていた。この業界の仕事を覚えたいという気持ちはあるが、ここで捕まったらあかんなと思った。

 でも、職場の人間関係は良くなってきた。まわりの人達に評判の悪かった自分の印象も、持ち直してきた。これも人徳である。へへへ。

 この本屋さんは経営者がご夫婦で、その弟夫婦もいて、経営者の息子もいた。同族すぎる。あるとき、経営者の息子が新しい車を買った。日産のグロリアである。トヨタのクラウンと同格の高級車だった。まだ20代の若造にぜいたくすぎる。カローラ、いやスターレットでええわ。

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▲日産グロリア

 その上、オーダーメイドでシートにかぶせるムートンを買ったと自慢してきた。ウン十万円したそーである。これを聞かされた時、ブルジョアジーの傲慢とプロレタリアートの悲哀を感じた。ここには長くは居られないな。

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▲私が通勤で乗っていたホンダ・シャリイ原付き

 勤め始めから2カ月くらいたったある日、電話がかかってきた。半年くらい前に面接に行ったA書店からである。今、どこかに勤めていないのなら、もう一度会ってみたいというものだった。
 おお、神の手が降りてきたのか……。

(次回、未定)

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