「日本怪異伝説事典」 朝里樹

「日本怪異伝説事典」 朝里樹(監修):えいとえふ(著) 笠間書院 2020年

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◆あついけど、かるい本

 ボリュームのある本です。厚みは3cmほどあります。3段組み400頁もある。でも意外に軽いので、扱いやすい。

 感心するのは、構成が整理されて分量が非常に多いのに使いやすい。都道府県別に項目がまとまっている。話の長短はあるが1県あたり15前後くらいある。京都や東京などは多くなって、27〜30もある。それぞれの話はコンパクトにまとまっている。読みやすい。スキマ時間に読むのがいい。どこからでも読める。全部で800項目あるそうだ。

 参考資料は60点以上あるが、中には全20巻のものもある。

 索引が充実している。五十音別はもちろん、ジャンル別と人物別まで用意されている。
 人物別だと「弘法大師」が一番多い。四国の話でも、弘法大師はあちこちに出てくる。それが四国巡礼、八十八箇所巡りに深く関係している。

◆蛇伝説は民話の定番

「三輪山の苧環(おだまき)型の糸伝説」奈良
 蛇が人間の男に化けて、人間の女と結ばれ、妻が男の正体を探るという昔話。
類似した昔話が全国各地にある。その元型らしい。

 これは、人間と動物が形は変われども同じような存在だったと思っていた時代があった。ほかにも、石、岩、池や森など自然のものが、まるで人のような扱いになっている。二つの山が高さを競う「両岳背比べ伝説」は全国にある。

◆兄妹でひとりは鬼になる『鬼滅の刃』みたい

「鬼餅伝説」沖縄
 父母を早く亡くした兄妹がいた。妹は嫁に行った。兄は投げやりの気持ちからやがて鬼となった。子供をさらって食べるようになった。
 噂を聞いた妹は兄をなんとかしなければと思った。崖の上に誘い出し一緒に餅を食べた。
 兄が妹を見ると、妹が着物の裾の前をはだけて、股間を丸出しにて座っていた。兄は驚いて「お前の下はなんだ」と聞いた。妹は「ここは、鬼を食べるところだ」と答え、すぐさま兄を崖から突き落とした。

 下ネタなんだか、怖いんだか、妙になまめかしい不思議な話である。

◆不思議は現代も生まれくる

 伝説はどのようにして生まれるんだろう。奇妙なこと、不思議なことが原因とは限らない、人々の願望が作り出すこともある。

 先ごろあったNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の最終回で、明智光秀が本能寺の変の後に討たれずに、実は生き延びていたのでは…、という演出になっていた。本書にも、光秀生存説が岐阜や滋賀に残っている話が載っている。
 源義経が生き延びてジンギスカンになったというのも有名。

 伝説は古い時代のことじゃなく、現代も生み出される。事実だけじゃなく、人の想像力、心理が投影されて世界の雰囲気が生まれてくる。数ある民話集と最大の違いは、現代の怪異が収録されていることだ。ツチノコ(徳島)、お化け博士が作り上げた哲学堂公園(東京)、屋島(香川)の奇妙な坂などがある。

 自分が暮らしてきたところに、もうひとつの、いろんな世界がある(のかもしれない)。

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